ゲノム編集トマトを栽培してみる ①苗が届く→定植

トマト

うちの畑では基本的に、自家採種できる固定種を使うことが多いのですが、スイートコーンみたいにF1品種以外に実質的な選択肢がないものはF1品種を使っています。もっとも、そのスタンスはわりとゆるふわで、キャベツはほぼ毎年F1品種も使うし、青首大根とか白菜なんかでF1品種を使うこともあります。

いままでその判断基準をちゃんと言語化して意識したことはないけれど、品種選びの尺度を比重の重い順に並べると、

僕と彼女が食べたいと思ったもの≒僕の好奇心>栽培難度に無理がないこと>自家採種できてコストが安いこと>>>>>>固定種のこだわり

と言う感じで、何が何でも固定種でなければならないと言うような縛りはぜんぜん持っていなくて、まあ簡潔に言うならば、

とりあえずそのとき育てたいと思ったものを育てる。それが自家採種できる固定種ならなおよし。

そんな感じ。

なのですけど、今年の年始ごろ、来年のトマトは何育てようかなーなんて考えているタイミングで、僕の琴線に色々な意味でクリーンヒットするニュースを発見してしまったのですよ。

ゲノム編集の高GABAトマトが来年から市場に流通開始。まずは栽培モニター募集

っていう。

冒頭で述べた固定種 or F1種という二項対立を超越した「ゲノム編集」という新ジャンルが、モニター募集(無料)という甘い蜜でもって僕の眼前に現れたわけです。

菜園の世界に片足どころか体全体でダイブしてる僕が、この甘い蜜に抗うはずもなく、

これはもう申し込むしかない。

と、好奇心の赴くままに、その日のうちに申し込みフォームを入力したのは言うまでもありません。

で、それから数ヶ月は、モニターに申し込んだこともすっかり忘れていたのですが、4月ごろに苗の送付先の最終確認の連絡が来て、「あ、これモニター当選してたんだ」って思い出しまして、その後5月下旬に苗を発送しますとの連絡があり、約束の期日を迎え、苗が届いたのが昨日のこと。

ほんとにたタダで苗が来た。

しかもなんかシャレオツな瓶に入った肥料とかもしっかりセットになってんだけど。

これ、ひと便2000円以上コストかけてるよなー。だとしたら、2000円×5000人のモニターで、1000万?!

と、パイオニアエコサイエンスのゲノム編集への本気度を察すると同時に、タダより怖いものはないっていう言葉が頭を掠めたのでした。

というのも、僕がこのモニターに応募したのは、好奇心半分、後の半分は、

「将来的にゲノム編集品種が市場を席巻した場合、編集された遺伝子配列自体に特許権のようなものが設定されるのでは?」

という懸念があったからなのです。

有名な話で、モンサントの遺伝子組み換えの花粉が飛んできて、それが勝手に交雑して、「これうちの組み替え遺伝子入ってんじゃん。はい特許侵害ね」みたいになった訴訟がカナダかどっかでありましたが、それと同じようなことが日本でも起きるだろう僕は思っているのですよね。

日本ではいまのところ、遺伝子そのものに特許を認めるような法律はないはずですが、今後、ゲノム編集が品種改良の主流になった場合、品種を構成する最も小さなパーツである遺伝子単体に知財権が認められる時代が来るでしょう。

僕は、そんなつまらない時代の到来は何としても阻止したいのです。

そのためのささやかな抵抗として、今回ゲノム編集品種第一号となるこのトマトからF2世代やその後代を採種して、自家採種を続け、ゲノム編集品種だろうと何だろうと自由に自家採種する流れを、この小さな畑で地味に継続してみる作戦です。(こんな不純な動機でモニター応募してすまんな)

なので、このトマトの「普通のトマトより5,6倍GABAが多い」という形質については、正直どうでもいいのです。

毎年々々、調理用の固定種ブッシュトマトを100株近く育て、そのほぼ全てを自家消費してる僕らは、普通の人の5,6倍以上トマトを食べているわけで、たぶんGABAは足りていますから(笑)

そんなわけで、届いた日の午後に苗を定植。

今年は固定種のエアルーム品種を10品種ほど育てているので、万が一の交雑を防ぐために、ゲノム編集トマトは今年新たに作ったブルーベリー畑の畝間で栽培していきます。ゲノム編集の遺伝子で遺伝子汚染が起きたらさすがにちょっと嫌なのでね。

ちなみに、株元に光っているのは、5月下旬の今が加害のピークなネキリムシをガードするためのアルミホイルです。装着が面倒ですが、これをやるとほぼ加害されなくなります。

(なんかゲノム編集アンチっぽいことを言っている割に、めっちゃ過保護にアルミホイル巻いてて草)

まあ、僕のゲノム編集作物へのスタンスは、「ゲノム編集技術自体には懐疑寄りのニュートラルだけど、遺伝子自体に知財権を認めるような流れには超大反対」という感じなので。

この子達はとりあえず大事に過保護に育てていきます。

そしてなんとしても自家採種まで持っていくぜ!

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