悲しいかな、プレカット全盛の巷では、手刻みの仕事はもはや趣味の領域というか、お金持ちの道楽みたいになっているらしく、そういう家づくりはかなり減っているみたいです。
手刻みで作る人がいなければ、当然、手刻みの道具も売れないってことで、
中古の手刻み用の機械は今、在庫がだぶついていて、わりと格安で流通してます。
幸運なことに、僕らの住んでいる街には、まだ現役でやっている大工道具屋さんがありまして、そういう本職大工用の道具が簡単に、安く手に入ります。
素人セルフビルドの僕としましては、
「しかたないなあ、そんなにだぶついてるなら、ワイが使ったるわ。いっとくけど、決して技術のなさを道具でカバーするとかじゃないからな!え、ホゾを一発で作れるホゾ取りっていう機械がある?そんなん買うに決まってんだろ!」
って感じの所存でして、すでに結構いろいろ買ってしまっている気がします(笑)
で、去年の秋ごろ、その道具屋さんで自動鉋という機械を買ったときに一緒に、そんな時代遅れなアイテムを一つ買っていました。
その名も、「大入れルーター」
上の写真のやつです。
これ、どういうとこに使うのかといいますと、こんな仕口を作るのに使います↓
この形、「大入れ蟻掛け」っていいます。たぶん・・・
まあ名前はともかく、ぱっと見で、「あーこれめんどくさそー」って思っちゃうような形。
これを、鑿でやるのと比較したら一瞬といっていいほどの時間でやってしまうのがこの大入れルーターというアイテムなのです。
個人的に、この蟻の斜めのとこを鑿でやるのが超絶ムズイ&めんどいので、こんなチートアイテムの存在を知ったときは、「あ、絶対買お、これ」って即決しました。
定価は20万くらいらしいのですが、中古は1万5千円でした。もっとも、これは道具屋さん価格なので、ヤフオクとかだともっと安いかもしれません。
「手刻み」って聞くと、なんか敷居が高そうというか、「全部鑿と鋸で刻んでんだろーなー」っていうイメージがありますが、実際は、普通の平角の材料を使うなら、こういう便利な機械でできることが結構あるんですよね。
で、そんな機械たちですら、今の時代、全然使う人がいないっていう。。。
人間、どんだけ生き急いでんだよ。。。
もっとゆっくりいこーぜ・・・
まあ逆に言えば、こういう便利な機械が新品と比べたら二束三文で出回ってる今は、セルフビルダーにとってかなり恵まれた時代といえるかもしれません。
だって、素人の仕事でこのピッチリ感出せるんですよ↓
これは、蟻のオス部分を木っ端で試作して仮組してるとこ。
ルーターのビットの形は不変なので、オスメスひとつづつの試作部材を型にして仮組すれば、現物の部材で仮組する必要はほぼないです。
オスの部材は、う○こ座りしながら、丸のこを木口に当ててアクロバットに操作して作りました(笑)
それと今回は「パイプ羽子板」っていう、部材の上部真ん中にボルトを仕込んで引っ張る部品をすべての接合部に入れますので、蟻の役目はねじれ方向の変形の抑制だけって感じだから、そんなにピッチリ作る必要はなく、オス側の蟻は墨消し程度に小さ目に作っています。
それでも、長さ150mmの蟻だと、ボルトいらないんじゃね?っていうぐらいガッチリ感出てますけどね。
あ、あと、あらかじめ墨の線に沿ってカッターで切れ込みを入れといたほうが綺麗に仕上がります。これは、最近向かいの材木屋さんの倉庫で刻みをしてる大工さんに聞きました。こういうテクニックはネットにもあんま情報ないし、生の声を聞けるのは超ありがたいわ。
そんなわけで、
道具にめっちゃ助けられながら、地道に刻んでいる今日この頃なのでした。
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