うちの枝豆は、128穴のセルトレイで育苗してから畑に植え付ける方法で栽培しています。
その方が直播より種の歩留まりが良く、欠株もなく、播種後の天気にも左右されにくいので。
セルトレイでの育苗で問題があるとすれば、それはただひとつ、「発芽率が水の管理に大きく左右される」ってことです。
といっても、あっさり味の普通の品種(大豊緑とか大豆用品種とか)なら、種を播いた直後に水をたっぷりやって、その後は発芽まで一切水をやらないっていう方法で全然問題はないのですけどね。
問題なのは、越後ハニーみたいな茶豆や、おつな姫や湯あがり娘みたいな茶豆風味なんですよ。
そういう品種って、食味はすごくいいんですよね。香りが強くて、甘くて。
一方で、「甘い」っていうのはつまり、豆の中の遊離糖とか遊離アミノ酸が多いってことでもあり、どうやらその特徴は種の段階からすでに持ち合わせているようなのです。
で、それだと何がまずいって、圧倒的に腐りやすいんですよね。
水をやりすぎるとすぐ腐敗しちゃうの。
おそらくだけど、水分大過ぎ→種の呼吸が滞る&菌の生存条件が整う→種の代謝速度より先に、菌が種の糖とかアミノ酸を養分にして蔓延るってことなのだと思う。
普通の大豆とかは、代謝速度と、デンプン→糖、たんぱく質→アミノ酸のバランスが整ってるのであまり問題は発生しないのだけど、茶豆系は風味に全振りした分、発芽障害が起きやすいんでしょうね。
甘いスイートコーンとかも同じ傾向で、粉用のフリントコーンとかと比べると圧倒的に発芽が弱いですし、最近の作物は、ちょっと品種改良が行き過ぎているのかもしれません。
そういうわけで、
「げんき娘」という茶豆風味の品種を1Lの大袋で買ってしまった今年は、かなり細心の注意を払って育苗しているのですけど、最近は枝豆をうまく発芽させるコツを掴みまして、発芽力が弱い茶豆風味の品種ながら、90%の発芽率を安定して出すことに成功しています。
「げんき娘」は「湯あがり娘」の妹分的な品種で、やはり茶豆風味なだけあって、気温、セルトレイの土の詰め方、水のやり方などに敏感に反応して、少しでも管理が雑だと発芽率が激減します。
今年はすでに128穴セルトレイで11枚分の苗を育苗しましたが、そのうちの6枚目は発芽前に大雨に当ててしまって発芽率が30%ほどにまで低下し、かろうじて発芽した芽も子葉が片方取れてたり、徒長したりしてたのですべて破棄しました。
なので、「この品種のこのロットが特別発芽率が良かった」というわけではなく、「発芽力が弱い」という茶豆風味の特性はしっかりと持っていたわけです。
その一方で、6枚目以外のセルトレイはすべて、低くても85%くらい、アベレージで90%強くらいの発芽率を出せていますので、僕がつかんだコツのようなものは、これを見てるネット民と共有する価値があるかなーなんて思いまして、その一端をここに紹介しておくことにしました。
コツその① 土はふわっと詰めること
セルトレイに詰める土は、あれば市販の培養土、なければ畑の土を篩にかけたもので大丈夫だと思います。
僕は畑の土派です。ケチなので(笑)
土の種類よりも大事なのは、その詰め方です。
ぎゅうぎゅうに詰めるのはNGで、力をかけずに擦切りいっぱいにした後、トレイを少し持ち上げて平らな地面に2,3回トントンとやるくらいがちょうどいいです。
擦りきりにした土を少し沈ませるイメージです。
とにかく、指で押し付けたりはダメ絶対。
あと、詰める前の段階の土の湿り気も重要で、理由については後述しますが、水はけがいいうちの畑の場合、雨が降った次の日の土を篩って使うとちょうどいい水分量になるようです。
コツその② 種はへそを下にして播くこと
豆の“へそ”っていうの?あの黒いとこ。
種を播くときは、あれを下向きにして播くこと。これが割と重要です。
理想を言えば、へそに付随する胚軸の向きを考慮してやや斜めに播くのが最強なのだろうけど、写真みたいに種子消毒のマーカー着色料がついてると胚軸はほぼ見えないので、そこまでは気にしなくてもいいかな。
なぜ向きにまでこだわるかというと、枝豆はこのへそ(正確には胚軸のとこ)からまず根っこを出して、その根っこが子葉を持ち上げて発芽に至るので、播くときから「根が下、子葉が上」っていう位置関係を整えてあげると種が余計な体力を使わないで済むのです。
逆に、へそを上にして播くと、根っこが出てから豆が姿勢を整えるまでのタイムロス&エネルギーロスが発生して、腐る確率が上がってしまいます。
向きを整えて播く細かい作業なので、ピンセットを使います。
深さは1~1.5cmが妥当です。
深すぎるより浅すぎるくらいの方がいいです。
コツその③ ここが超重要!水やりは半日後に!
種を播いた後は、ちらちら見え隠れしてる種を隠す感じで軽く土をなじませ、種が見えなくなるようにします。
①と同じく、ここでも指でぎゅうぎゅう押したりするのは厳禁です。
で、ここからが要のところでして、
普通のやり方だとこの段階ですぐに水をやるのだけど、僕はまだ水やりはしません。
このまま半日待ちます。
朝に種まきしたらその日の夜まで、夕方に種まきしたら次の日の朝まで、このまま放置。
イメージとしては、土の湿り気のベールで種を包み込む感じです。(水のベールでは断じてない。“湿り気のベール”←ココ重要。)
①で“セルトレイに入れる前の土の湿り気が大事”といったのはこのためです。
いろいろと調べたところによると、枝豆の種は播種直後から吸水が始まって子葉が膨らんでいくのだけど、このとき環境中の水分が多すぎると、子葉の膨張に種皮の伸縮がついていかなくなって、皮が破れてしまうのだそうです。
そして皮が破れるとそこから雑菌が入ったりするらしい。
つまり、枝豆にとって最適な水分環境は、まず皮がふやけて、それから徐々に中の子葉が膨らむっていう順序に沿って、水が徐々に供給される環境なのです。
これはすなわち、雨の日の翌日or曇りの日の畑に直播するのが一番いいってこと。
・・・なんだけど。
畑の天気はコントロールできません。
曇りの日はそう都合よく来ないし、ゲリラな大雨の日もあるし、カンカン照りの日もあるわけで。
セルトレイを使い、土の湿り気のベールで半日包むのは、雨の翌日の最適な水分環境を人為的に再現するためなのです。
で、理想を言えば、このまま湿気のベールで包み続けるのが一番いいのだけど、土の容積が少ない128穴のセルトレイだと、発芽するまでにカラカラになってしまい、最初の湿り気だけだと水分がちょっと足りないのです。だから最初の湿り気+αの分を補う必要があるわけ。
そこで、種を播いてから半日後に水をやるのです。
半日湿気のベールに包まれた種は、種皮の柔軟性がでて、子葉も緩やかに膨らんでいるので、急激に吸水して皮が破れる可能性が大幅に減っています。水やりはそのタイミングで行うのがいいのです。
ただ、必要なのは+αの分だけなので、たっぷりびちょびちょにはしません。
セルトレイの下の穴からは出ないくらい。イメージ的には、土の上から半分が水にぬれるくらいの量を、じょうろでサッとやるだけです。
後は基本的に発芽まで水やりをせず放置でOK。
トレイを置く場所は梅雨どきの今なら軒下の半日蔭、春の寒い時期なら直射日光のあたる暖かい場所で、霜が降りるような早春の時期は薪ストーブのあるリビングの食器棚の上に置いたりもしてます。そのへんは枝豆の発芽適温25~30度を目安に、臨機応変にちょこちょこ移動しています。
また、5月初旬なんかはまだ気温が低いので直射日光のあたる所に置いておくことになるのですけど、それだと春の乾いた風で乾燥することもあるので、そういう時はこれまた臨機応変に水をやります。
その時もトレイの下までびちょびちょにするのではなく、土の湿気のベールを維持するイメージで、表面から1cmくらいが濡れる感じでサッとやります。
コツその④ こうなったらタップリ水やりOK
基本的に枝豆は、最初に吸水してプックリ膨らんだあとなら、よほどのことがない限り水分不足では枯れないので、トレイの下までカラカラになるような場合を除き、追加の水やりは要りません。
芽が出るまでは。
芽が出てしまえば、毎朝タップリ水をやっても大丈夫です。
だいたい上の写真くらいか、これより半日早いくらいの状態になれば、トレイの下から水が出るくらいタップリ水をやっても、過湿が原因で発芽障害が起きることはまずないです。
むしろ少々濡れ気味くらいの方が種皮が自然に脱落しやすくなって、その後の芽の成長がスムーズになる気がしますし、128穴セルトレイは結構乾きやすいので、芽が出た後は毎日タップリ水をやるくらいの気持ちでいいと思います。晴れの日が続く場合は特にね。
さて、ここまで長々といろいろ書いてきましたとおり、
茶豆風味みたいに発芽力の弱い品種でも、最初は湿った土に播き、水やりは半日後に少量で、本格的な水やりは発芽してからっていうやり方でだいぶ発芽率が向上します。
写真のセルトレイは、播種からちょうど1週間の状態なのですけど、単純な発芽率でいうと97%、芽が異常っぽいのをはじいても90%くらいは苗として使える感じです。
まあ、今の時期は気温がある程度高くなっているので、この結果は若干下駄をはかせてもらった感はありますが、4月初旬から同じ品種を播き続けてきた僕の印象としては、気温よりも水分管理の方が圧倒的に影響が大きい気がしています。
気温が低い春先は発芽までの時間が長いのですが、水分管理が適正ならば、多少時間がかかっても全然大丈夫でしたので。
そんなわけで、
ちょっと長くなりましたが、
僕の掴んだコツは、こんな感じなのでした。
コメント
丁度、茶豆の発芽がうまくいかず悩んでいた所でした。
来年ためしてみます。
是非やってみてください。
うちの場合、去年は、7月半ばに極早生の品種をまいて9月後半に収穫できましたし、8月10日に早生種をまいた分も寒くなる前にギリギリ採れましたので、今年もまだ間に合いますよー