建前3日目の続き
助っ人を呼んで柱と胴差を立て起こしてからすでに10日ほどが経過したものの、いまだに屋根がかかっておらず、雨ざらしなままの建前作業。
というのも、僕の雇われ仕事が最繁忙期に差し掛かっていまして、なかなか思うようにセルフビルドの作業につきっきりになれないのです。
それに加えて、ここ数日、彼女の仕事も立て込んだりして、二人で作業することもままならなかったりで、「あー、ほんとマジで影分身の術使えたらどんなに楽だろう」などと思うことが多い最近。
春になって雨も増えてきたし、いち早く屋根までかけたねば!というのが目下の課題です。
ということで本日は、朝イチから建前作業です。(彼女は仕事のため午後イチで離脱)
今回は、この小屋の建築作業で最長の部材であるがゆえに最大の懸念事項でもあった 、渡り顎の下梁(桁)の吊り上げを行いました。
全長約8.5mの下梁を、地上で組んでから上に揚げる。足場?クレーン?そんなものはないのだよ
全く何もかも初めての建前の工程では、できるかできないかの判断もやってみなければわからず、まさに、
できるかできないかじゃない。やるかやらないかだ!!!
を地で行くような、無謀でスリリングな作業になっています(笑)
もっとも、設計の段階で僕の凝り性が発症して、初めてのくせにやたらと太い部材を採用したり、合板を使わないでやるって決めたり、自分でハードルをあげてるので、「いや、もっと簡単な構造にしとけよ、この素人が・・・」ってことなんですけどね。そもそもが。
だがもう刻んじゃったもんはしょうがない!
ってことで今回は、
この小屋の建築工程で、最も重くかつ最も長い部材を柱の上まで引っ張り上げる作業を行いました。
その部材というのがコレ↓
約8.5mの下梁(桁)です。
材質は天然乾燥の杉で、背が240mm、幅は120mm、4m材と5m材を追っ掛け継ぎで継いであります。
継手制作時の記録はこちら↓
小屋の上部は桁通しの渡り腮で梁を組むので下梁と呼んでいますが、普通に言うところの桁的な部材です。
この部材が、まあ重いこと重いこと。
継ぎ手をばらして二つの部材に分ければ僕一人でも運べなくはない重さですが、継いで一本にした状態だと、一人では持ち上げることも不可能。
おそらく、一本で140㎏程度はあると思われます。
そんなただでさえ重い部材に輪をかけて、さらに今回はなんと、この部材を地上で継いで一本にしてから、電動ウインチで柱の上部まで引っ張り上げるという、かなりデンジャラスな試みを計画していたのでした。
しかもウインチの使い方がマジで無謀っていう・・・
ここから上の写真の説明です。
建物の芯となる五番の柱の二階部分に、4mの2.4mm厚単管パイプを立てて、パイプの下部は単管ベースに差し込み、ベースは足場板を貫通して胴差にボルトで固定しています。単管パイプは柱上部にもロープで固定。ロープは軽く結んだ後、隙間に柄の長いレンチを差し込み、ぐるぐる捩って締め込みました。
さらに単管パイプの上部には長尺の異形メガネ釘を挿入し、メガネ釘のカンの部分にシャックルを介してフック付き滑車を取り付けてあります。
電動ウインチは単管パイプの下部に取り付け、ワイヤーは単管パイプ上部の滑車を経由し折り返して地上まで降りるようになっています。
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正直なところ、この構造、僕の頭の中で「これをこうして、あれをああして、これならいけんじゃない?」って感じのノリで考えてみただけで、ネットを参考にしようにも他にやっている人も見当たらず、全くの行き当たりばったりで実戦投入したので、8.5mの梁を持ち上げうる耐力があるのかは甚だ疑問でした。
ええ、そうです。完全に“ぼくのかんがえたさいきょうのにあげ” でした。はい。
がしかし、
結果から言うと、
8.5mの下梁、無事に揚がりました!!!
ま、まあ、単管パイプがプルプル震えながらしなってたのは正直めっちゃ怖かったけど・・・
しなっているだけで、降伏するまではまだ全然大丈夫って感じ。
単管を支えるベース+ロープはびくともせず、電源からコードリールで50m延長したウインチにも出力不足などはなく、するすると揚がっていきました。
上まで揚がった段階で、単管を括り付けた五番の柱のホゾ穴はほぼドンピシャで位置が合ったし、1cmくらいずれていた二番の柱のホゾも掛矢で横から叩いたり、ロープで引っ張ったりしてるうちに先端が入りました。
また、桁行の通りは、ほぼそのまま何もしないでもすんなり入るくらい整っていました。これに関しては、柱と胴差の接合に使ったパイプ羽子板がきっちり仕事した証拠かなと思います。
それとやはり、前日の夜のうちにレーザーレベルで柱の垂直を出して仮筋交いで固定した4隅と中央の柱は、とてもすんなり入りましたね。今回は横着して4隅と中央の柱のみだけしか垂直出しをしていませんでしたが、すべての柱を垂直に立てて仮筋交いで固定すれば、穴の位置合わせはもっと楽になったはず。次回、反対側の桁を持ち上げる際には事前にすべての柱の垂直を確認する予定です。
それにしてもまあ、”ぼくのかんがえたさいきょうのにあげ”が、実際割と最強でホントよかったです(笑)
追っ掛け継ぎ最強説
今回、無謀にも、こんな長い部材を地上で一本につないでから上に揚げようと思ったのは、継ぎ手を刻んで仮組した段階で、継ぎ手部分の剛性を実感したからというのが大きいです。
一本に継いだ部材のケツを持ち上げた瞬間に、
あ、これ、下でつないでから揚げても大丈夫だわ。
って直感で思ったんですよね。
で、実際、ぜんぜん大丈夫でした。
でも、あとからこうして冷静に写真を見てみると、これ、かなりやばい状態じゃないですか?
写真の左の部材に関しては、スリングがかかってるのは継ぎ手のほんの先の部分だけで、支点がほぼないですもん。
つまり、4mの部材のほぼすべての荷重が、継ぎ手部位に集中してかかって、片持ちのような格好になっている状態。
金物を全く使わず、楔を一本打っただけでこの強度とは・・・
しかも、ここにさらに丸込栓も打つわけだし。
追っ掛け継ぎ、おそるべしだわマジで。
セルフビルド界隈でよく使われる腰掛鎌継ぎじゃ、金物で補強したとしてもこの吊り方は出来ないもんなあ。怖すぎて。
そう考えると、練習して追っ掛け継を習得しといてよかったー!!!
(僕の体験談で恐縮ですが、匠の技みたいに思われて敬遠されがちな追っ掛け継ぎも、4寸の角材で数ペア練習しただけで、割とものになるレベルまで上達しました。まあ、プロからしたらまだまだなんでしょうけど、少なくとも、支点なしの宙ぶらりん片持ちの状態で吊って大丈夫なレベルにはなりました。吊り方に関しては推奨はしませんけどね(笑)、強度は間違いないはずです。)
板倉造りの板を少しだけ落とし込んで、本日は終了
次回の記事で詳しく触れようと思いますが、この小屋は、ホールダウンアンカーのある所と、窓が入る所以外、「板倉造り」という技法を取り入れて壁を作ることになっています。
板倉造りは、その構造上、桁や梁を柱のホゾに納める前の段階で、柱と柱の間に板を挿入していきます。
つまり、板を入れ切らないと、今日揚げた下梁を柱に接合することができないわけです。
じゃあ、なんであんなクソ長い下梁を先に上に揚げたん?板入れてからでいいじゃん。
ってことなのですが、それにはちゃんと理由があります。
それは、下梁のホゾ穴をガイドにして、柱間の間隔を整えるためなのでした。
というのも、この小屋の桁行の柱はすべて、4mの柱を柱通しで使っているので、土台に柱が刺さっただけの状態だと、柱間のブレが大きすぎるような気がしたのですよね。
そこで、板を入れる前に下梁を持ち上げ、下梁のホゾ穴に柱のホゾをチョイ差しして、柱間隔を整えたうえでさらに仮筋交いを打ち付け、板を入れていくことにしたのです。
※長くなりそうなので詳しくは次回
とまあ、そんなわけで、夕方まで作業して、ここまで板を入れまして、建前4日目は終了となりました。
ここまでくると、俄然家っぽくなってきました。
いや、まあ、これ作業小屋なんだけどさ・・・
作業後、彼女と顔を見合わせて、
「うん、これ、家だね完全に」
と、謎の納得(笑)
と同時に、図面以上にしっかりした建物ができそうで、改めてめっちゃやる気が出てきました!!
なのに明日から4連勤かあ、ああ、マジで影分身したいってばよおおおお!
小屋建前5&6日目に続く
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