つい先日、枝豆としてとり逃しそのまま大豆になってしまったものを、来年の枝豆の種用として収穫しました。
品種は「げんき娘」という極早生品種で、2008年に品種登録された比較的新しい品種です。
この品種、僕の中では今のところ、ベストではないけど毎年種を採って栽培してもいいかもと思える品種でして、新鮮できれいな種が1ℓ以上も収穫できたことはとても嬉しいことでした。
それから数日後の本日の夜、ゆるゆるとネットサーフィンしておりましたら、わりとがちで僕らの暮らしに関係しそうなニュースが目に留まりました。
種苗法改正案を可決 海外流出防止、農家負担に配慮 衆院農水委
この改正案、農業・菜園界隈では数年前からじわじわ話題になっていて、今年の春ごろに一度改正が見送られたのですが、半年経つか経たないかのうちに再び俎上に乗り、今度は可決されたようです。
改正案の内容については上のリンクの記事のとおりですが、簡単に言うと、僕らの日々行っている“自家採種”が大幅に制限されることになりそうです。
たとえば冒頭の「げんき娘」、おそらくこの品種は今後、メーカーの許諾を得ないと採種できなくなる可能性が大です。
まだ改正後の法律が出来上がっていない段階なので何とも言えませんが、ニュース記事を見る限り、登録品種の自家増殖は原則禁止の許諾制になるっぽいですからね。
僕としては、
先週登録品種の種採りしたばっかなんだけど、これどうすんだよ・・・(困惑)
って思ったのと同時に、
うわー、ついに来たかー
って感じ。
種子法が廃止されたあたりからなんか怪しいなと思ってましたが、それからが結構早かったなあ。
それにしても、いざ改正されるとなると、クッソうざいですねこれ。感覚的に。
そもそも、いままではどうだったのか?
今回の改正案が可決された場合、現行法と何がそんなに変わるのかということなのですが、
いままでは、 登録品種の自家増殖は原則OKで、例外的に自家増殖禁止の品目がある(下の表の387品目)という感じのスタンスでした。
じつは数年前から、種苗法の自家増殖に関する規定はじわじわマイナーチェンジされていました。もちろん厳しくなる方向で。
具体的に言うと、自家増殖禁止の品目数が、2016年から年を追うごとに 82→289→356→387という風に段階的に増やされていたのです。
それでも今までは 農家による自家増殖は原則OK
これだけは通底していました。
それが今回の改正案では180度ひっくり返って、登録品種の自家増殖は原則禁止の許諾制にするっていう、だいぶすごいパラダイムシフトが提起されています。
まじで、だいぶガラッと一気に変えてくるなー、って感じなんだけど、これ、将来的に僕たちがやろうとしてる計画にかなり干渉してくる気がしてまして、正直かなり戦々恐々としてます。
果樹の接ぎ木苗作りがダメになるかも
前に書いた通り、現在、母屋の前の荒れ地をユンボで開拓して、果樹園エリアを作っています。
苗木も、今年のブルーベリーの売り上げをオールインして、すでにだいぶいろいろ発注しました。
10年スパンの計画としては、ここに植えた果樹の中からこの土地に合いそうなものを接ぎ木で自家増殖して、果樹園を拡大し、常に何かしらの果物が成るエデンの園みたいにして、ついでに隣の土地を買収して、ブルーベリー園で収益化して・・・っていう壮大な妄想を抱いてます。
そのために今年から台木用の実生もいろいろ大量に蒔きましたし、参考書も買い込んだし、もはや果樹沼に片足突っ込んで戻れなくなりつつあります(笑)
まあそんなわけでして、
接ぎ木の原則禁止も盛り込まれる予定の今回の種苗法改正案は、この計画にかなり干渉するのでは?と思うのです。
すでに発注した苗の中には、梅の「露茜」とか、アンズの「ニコニコット」などの登録品種もありますし、「ニコニコット」に関してはうちの主力アンズとして増殖しまくって、敷地のところどころにいっぱい植える予定なんですけど、それがだめになるって考えていいのかな?
それだとだいぶ困るんですけど。
許諾制にするなら、手続きを簡単にしてくれよな?
上述の自家増殖禁止品目387種の、特に果樹の項目(9種)を見ればわかるのですけど、いまのところ、主要な果樹作物の自家増殖はほとんど禁止されていません。
「カリン属、クルミ属、スグリ属、ナツメ属、パパイヤ属、バンレイシ属、マツブサ属、マルピーギア属、ムサ・アクミナタ種」の主要果樹って、ほぼないので。
逆に言うと、
リンゴとかモモとかブドウみたいなメジャーな作物は、いまさら禁止品目に設定できないほどに、すでに農家や園芸マニアが普通に自分で接ぎ木して増殖したりバックアップ苗を作ってるのです。それがスタンダードなのですよ。
それらを新たに禁止したらさすがに影響が大きすぎるので、禁止品目にはならなかったと。
それが今回の改正案では一律原則禁止にしますって、サラッとニュースになってるけど、これ、だいぶパラダイムシフトですよ。
一応、農家に配慮して許諾制にしまーす、みたいに言ってますが、それなら許諾の仲介手数料は無料、手続きは個人でも小ロットでも申請OKで、ネットで完結、そのぐらいは当然やってくれるよね?
許諾料も、果樹なら一本数十円とかに上限を設定してくれよ?
許諾制はまあ百歩譲って受け入れるとしても、手続きが煩雑で金がかかるなら、そんなん無視して今まで通り勝手にやるわってなるもん。
って僕は思うのだけど、そのシステムを作るのに100億単位でお金かかりそうだよね・・・
そんな気概あるのかしらね。
家庭菜園&自家消費はOKらしいが・・・
農水省のHPによると、
Q. 今回の法改正で、家庭菜園(販売、譲渡を行わない場合)での利用に影響はありますか。
A. 今回の法改正は、自家消費を目的とする家庭菜園や趣味としての利用に影響はありません。
とありますが、僕らみたいに家庭菜園より大規模で、いちおう作物の販売もしてて、だけどガチの農家ってほどでもないっていう規模の農家はどうなるのでしょうかね。
また例えば、家庭菜園で登録品種の増殖をして、数年後にガチの農家に転身した場合、どうすんだろ?
僕らの今の果樹園の状態がそれに近いので、非常に気になります。
あと、”今回の法改正で”っていう但し書きも怪しさ満点だよね。
「次回以降に替えないとは言ってない」
って言ってるようなもんだし。
というか、一度パラダイムシフトが起こってしまったら、今後農民の権利は縮小する一方になるのは必須でしょう。
先に言っておきますが、僕たちは反対ですから!!
たぶんだけど、僕ら、この改正案が正式に通っても、今までと変わらず普通に自家増殖しちゃいますし、その種や苗から採れた作物を販売もするでしょう(笑)
ここまで書いてきてそう思い始めました。
僕はそれが農民の権利だと思うし、そもそも近現代の品種の進歩は僕たちみたいな農家や園芸マニアの好奇心に支えられてきたと思っていますので、そういうひとたちの好奇心を大幅に削ぐような改正案には強く反対します。
民主主義のルールから若干逸脱する気はしますが、これに関しては行動で示しますよ。(前回選挙は種苗法改正反対の党にいれてますし)
ヤフコメ民の反応とか見てると、意外にも賛成意見がかなり多くて困惑するのだけど、中国とか韓国を仮想敵にすれば、こうもあっさり世論を誘導できるものかと少し怖い感じがします。
農家の自家増殖と品種の海外流出は全く別の問題なのにね。
それに結局、割を食うのは農家ではなく、許諾料が転嫁された作物を買うことになる消費者なのに。それはいいんだろうか?
たいてい、こういう風に仮想敵を作って論点をずらし、「それなら法改正も仕方ないね」っていう論調が出てくる時は、裏で何かをたくらむ存在があるものです。
種子法廃止→種苗法改正っていうここまでの流れ見てると、食料を牛耳って儲けのネタにしたい存在がいるのが見え見えです。
今回の法改正で、登録品種の許諾制が新たに導入されることになると、儲かるのは品種の育成者で、おそらく今後、品種改良の主体は大企業になるため、結局はその大企業の株主の取り分が増えることになるでしょう。
だとすると、どういう人たちがこの改正案をこうも急いで通したいのかが見えてきます。
うわーマジで、最悪だわ。
法改正自体もそうだけど、ネット民の反応とかいろいろ見てるうちに、なんかすごい萎えてきました。
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